出版便り

日露戦争従軍記の名著『此一戦』と『肉弾』

 第二次世界大戦後、日本が平和国家となって消滅しましたが、明治三十八年(1905)からずっと、五月二十七日は「日本海海戦記念日」として国家の祝日でした。

 そんな日本が軍国主義であった時代のミリオンセラーでありロングセラーとなった2冊の本が桜井忠温(陸軍少将)の『肉弾』と水野広徳(海軍大佐)の『此一戦』です。

 この2冊はともに軍人文士による日露戦争の従軍記で、前者は二百三高地で有名な「旅順攻囲戦」、後者は、世界最強のロシアバルチック艦隊を破った「日本海海戦」の激烈な戦闘の様子が描かれています。

 2004年がちょうど日露戦争100周年で、その年にすでに入手困難となっていた日露戦争従軍記の決定版であるこの2冊を記念企画として復刊したところ、大変大きな反響がありました。

 そして本日、紀伊国屋書店新宿本店に行ったところ、『肉弾』、『此一戦』がなんと現代語訳が出版されておりました。昨年刊行のようです。しかも隣にはちゃんと弊社で扱っている原文の『肉弾』、『此一戦』(写真では、水色とオレンジ色の2冊)が揃えられていて、紀伊国屋書店新宿本店5階歴史書担当者の方の見識の深さに感心いたしました。

 原文は、明治期の文語と漢語による文章のため、現代人にはいささか読みづらいかもしれませんが、当時軍国少年たちは、苦もなく熱中してスラスラと読みこなしていた(私の文楽見物の師匠である東京陸軍幼年学校卒の大先輩談)そうなので、やはり両氏の品格と教養がにじみ出た格調高い文章は原文で読んでナンボだと思います。

 是非!
 

素晴らしき哉!充実の紀伊国屋書店新宿本店5階歴史書日露戦争棚。

 

 追記
 この二人のその後の人生も数奇で興味深いものがあります。水野広徳は、第一次世界大戦後のヨーロッパの惨状を視察して、反戦論者となって軍隊を辞めますが、桜井忠温は、出世して陸軍省新聞班長となります。
 これら二人の生涯をクロスオーバーさせて戦争と平和の問題を考察した名著があります。『帝国軍人の反戦 水野広徳と桜井忠温』(木村久邇典 著)です。実は二人とも愛媛・松山の出身で、もうひとつの「坂の上の雲」といった趣があります。

 

 

 

 横須賀の記念艦「三笠」売店でも販売しております。
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2011-05-17 | Posted in 出版便りComments Closed 

 

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